さて、次に漆喰を使ったところ
に関してお話します。
実は、ここにもストーリーがあります。
現在は漆喰が塗ってありますが、実は建築当初はドイツ製の自然素材由来の紙クロス:ルナファーザーを全面に貼りました。
これにはコストダウンという面もあります。
新築をお客様にご提案するとき、何から何まで理想で作ることはよほどの場合を除いて出来ません。
そんな時、どうしますか?
スペックを落として妥協する、という事を真っ先に考えてしまいがちです。
私は、それもアリですが、
ひとつの方法として、「将来、自分がやりたい事をやれるようにしておく」というのもアリだと考えます。
「諦める」から「楽しみに取っておく」と言い換えるのです(笑)
●仮に将来出来なくてもそのままでもちゃんと機能すること。
それと、
●新築時にやったことがなるべく無駄にならないようにすること。
新築時にやったことを解体廃棄するとその分が勿体ないことになります。
新築に全てを思い通りにするのではなく、住んでから時間をかけて自分好みに作って行く・・・。
家づくりは家が建った時がゴールでは無くて、そこがスタート。
そこから家族と共に暮らしながら作り上げていく。それ自体も楽しむ。
少し、気を長く持たないといけませんが、そういう考え方が私は好きです。
話は回りくどくなりましたが、このトイレに貼ったルナファーザーは正にこういった考え方をする上で適した材料です。
つまり、そのままでも通気性・透湿性のあるエコな紙クロスとして使える。
メーカーサイドとしては貼った後、塗装をして下さい、とありますが、塗らなくても問題ないです。
実際にうちでは、物入全体や一部天井なども貼って無塗装のまま17年経ちますが、何も問題ないです。
ルナファーザーは色柄も無く、あるのは表面のテクスチャーの違いだけ。ビニールクロスには無い通気性があり、言ってみたら素肌のような潔さがあります。
化粧無しの壁、スッピンの壁。
派手さは無いが、飽きがこなくて、ちゃんとした壁紙。
着心地の良い木綿のTシャツのような・・・・
そんなイメージです。
さらにこのルナファーザーは別名ペインタブルペーパー(=塗装下地用壁紙)と呼ばれ、上からそのまま塗装が出来ます。
(ビニールクロスとルナファーザーとの違いは文末※を参照)
・・・というわけで、わが家ではトイレに当初ルナファーザー→居住後、かなり経てから、漆喰を塗りました。
ここで使ったのはスイスで採れる漆喰です。私は漆喰を塗りましたが、勿論塗装することも可能でした。
これがビニールクロスだったら、クロスを剥がして下地を補修してそれからの仕上げ工事になります。
前回のブログで、お風呂にも漆喰を塗ったと書きましたが、お風呂の方は、仕上がりがつるっとしています。
トイレのほうは、写真の通りザラッとしています。
これは、漆喰の中に混ぜ込む骨材(砂)の違いでして、お風呂のザラッとしている方のスイス漆喰には大きい骨材が入っています。
骨材が小さいとなめらかな仕上がりになり、逆に骨材が大きいと肉厚が付くことで職人のコテさばきがそのまま現れるようなざくっとした仕上げになります。
これが面白いところで、漆喰の中に混ぜ込む骨材の大きさや、繊維の違い、また職人の塗り方によって様々な表情が楽しめるのがこういった塗物の特徴です。
トイレの壁も正面の一面だけはアーティスティックに荒々しい思い切った表情に、それ以外はざらっとしながらフラットに仕上げ、同じ素材で2種類の壁を楽しめるようにしました。