ノエルハウスの自然素材の使い方をお伝えするシリーズの第2回は珪藻土です。
コンセプトハウスを作るとき、私はその時自分が使ってみたい素材を色々と使いました。
これから家を検討する人が実際に選ぶ際に、住み手の立場から実感を持ってお伝えしたいと思ったからです。
今日は珪藻土を使った家に住んでいる私自身が17年間暮らしてみて、感じたことを率直に述べたいと思います。
珪藻土はコンセプトハウスでは玄関とホール、階段壁の一部にこれを使っています。
一つは仕上げたときの風合いや色合いが好きだったから。
もう一つは珪藻土が持っている機能・効果を期待して。
施主目線でお話する前に、一般的にいわれる珪藻土の特徴をざっとあげてみます。
「珪藻」とは、水中に生息するプランクトンの一種。
珪藻の死骸が長い年月をかけて海底や湖の底、川底などに堆積して化石化し、粘土状の泥土となったものが「珪藻土」です。
珪藻土は多孔質な構造を持ち、水分を吸収し放出する能力があります。湿度の変化に応じて湿気を吸収し、蓄えた水分を放出することで室内の湿度を調節します。このため、湿度のコントロールやカビの発生予防に役立ちます。
珪藻土は表面積が非常に広く、有害な物質や臭いを吸着する効果があります。揮発性有機化合物(VOC)やアンモニア、ホルムアルデヒドなどの有害物質を吸収し、室内の空気を浄化する効果があります。
珪藻土は断熱性能に優れています。空気の層が多く存在し、熱の伝導を防ぐため、室内外の温度差を緩和します。また、調湿効果によって湿度の上昇や下降を緩和するため、快適な室温を保つことができます。
珪藻土の融点は1000℃以上。古くから七輪や耐火レンガの材料として利用されていた素材です。そのため万が一、室内で火災が起こっても火が燃え広がりにくいというメリットがあります。
珪藻土は静電気を帯電しないため、ビニールクロスのようにホコリを吸い寄せるということがありません。
模様の凸凹に溜まったホコリも、はたきなどで優しく撫でるだけで綺麗になります。
また、珪藻土では顔料(着色料)を混ぜることで色を出すことができるため、カラーバリエーションが豊富です。
以上のようになります。
この特徴を見ると私がこの珪藻土を玄関に使った理由がわかってくると思います。
玄関は人の出入りもあり、外部に直接接しているので、湿気の影響受けやすくまた、靴を置いたりするので、臭いが発生しやすい。そこで、珪藻土を塗ればそれらが軽減すると考えて選びました。
デザイン面で言うと、左官職人が壁1枚、1枚、丁寧に塗ったぬくもりが感じられ、お客様を迎え入れる場所として上質なおもてなしの空間が作れたと思います。
急な来客があった時は、結構、この広めの玄関で済ませてしまうことが多く、滞在時間も長いので、このような場所にちゃんと手間をかけておいて良かったと思いました。
また、私たち住人が帰ってきた時でも、他の部屋と比べてワンランク高い空間に最初に足を踏み入れると、何かほっとする「家に帰ってきた」「ウェルカム!」と言う感じになります。
最初から珪藻土でなければそうは思わないのかもしれませんが、これが当たり前になると、この珪藻土の空間こそが、自分が家に帰ってきた安堵感とイコールになっているような気がします。
ただ、特徴に書いてある調湿効果や臭いを取ると言うような吸着効果、また、断熱効果などについては、実際に実感できるほどの違いまでは正直解りません。
多少なりとも効果が出ていて、もし珪藻土を使っていなかったら、もっと臭いがあったり、カビたりしていることがあるのかもしれませんが、実際、比べようがないですもんね〜
家によって各条件が違いますし。
プロがこんなことを言ってしまうと、元も子もないかもしれませんが(笑)
珪藻土を作っているメーカーの情報を見れば、明らかにその効果はわかりますが。
興味のある方はそちらを見ていただければと思います。
私がやって良かったと思うのは、やはり先に書いた仕上げの風合いです。
それから、塗り壁ならではの得意な技があり、それは壁に作るくぼみ(ニッチ)などを作る事です。
これを元々平面であるクロスでやると、どうしても継ぎ目がどこかに出来てしまいます。
継ぎ目の無い美しい仕上げは塗り壁ならではです!
ライティングをした時の美しさも珪藻土や漆喰ならでは。
階段に作った穴には小さなライトを仕込んでいます。
夜はフットライトで足元を照らし、リビングからは飾り棚に。
それと天然素材の為、静電気を帯びることがなく、ビニールクロスのように埃を吸い寄せることがないと言う点に関しては、確かにそう思います。
玄関は埃が生じやすいので、これは珪藻土で良かった点になります。
さて、良いことばっかり言ってもアレなので、少し弱点を言いますと、
「汚れやすい」こと。
玄関だと、靴を脱いだりするときに、ふとした瞬間に壁に手をついたりすることがあります。その時は分からなくても繰り返すうち、徐々に手垢のような汚れが壁に付いてしまいます。
ただ、クロスが汚れた時とは違って、塗り壁の時の方が「まぁ、これも住んでいるならではの味かな」と、気にならない人は気にならないと言うレベルかもしれません。
これには個人差があると思います。
それから、よく比較される漆喰の壁と比べると柔らかいので、硬いもので引っ掻いたりすると凹んだりかけたりすると言う可能性はあります。
でも、これも、私の家に対する考え方の1つなのですが、
人間も生きていて、いろいろな性格があるように、家で使う建材、素材にもいろいろな性質がある。
素材も生きていると言うと語弊があるかもしれませんが、同じように生きていて、私たちの生活に彩りを与えていると思うと、ちょっと家のことも違って見えてきませんか?
人間もそうですが、スーパーマンはいません。
珪藻土には珪藻土の良さがあり、そこを認めて使う。
柔らかくって凹んだり欠けやすいかもしれないけど、そのお陰で吸湿性があったり、見た目の暖かな素材感が人に安らぎを与えたりする。そういう家には自然に愛着が湧いてくるわけです。
そう思って珪藻土含めて家を大切に扱うと思ったら、壁に無造作に手をついたりしないし、カバンや傘を不用意にぶつけたりはしないわけです。
ここまでくると、「いやー、そんな面倒くさい素材使いたくないよ!」と思う方がいるかもしれませんが、そういう人は無理して使う事はないと思います。
世の中には、素材の良いところばかりを謳っている説明が多かったり、特にメーカーのはそのように書いてありますが、「良いところは悪いところと背中合わせ」と言う説明を丁寧にしていけば、より深く建材のことをのことを知った上で家を作っていけると思うんですよね。
今日はここまで。次回もお楽しみに・・・