本日は前回お話した、※VA(バリューエンジニアリング=家の価値を大きく変えずにコストダウンする)の例に関してこの家を例に数点取り上げます。
キッチンの天井は(お客様が選んだものですが)木のパネル柄のクロスを選ばれました。
これは面白いことですが、無垢の材料や本物の材料をメインで使っていると、部分的に使うプリント合板や、柄物のクロスが本物らしく見えてきます。
こだわりは人それぞれですが、天井に関して言うと壁や床などに比べまじまじと天井を眺める人は少ないため、また天井はメンテナンスもややしにくい面もあり、コストを落とせる部分であると私は思います。
柄を変えてもクロスは大きく金額に差が出ません。ここは無垢の板を使わなくても十分効果的でした。
※ただ場所により逆に天井を強調したデザインにこだわりたいと言う場合は別です。
(昔から天井に意匠を凝らす建築も多々ありますので)
また、今回はキッチンの対面カウンターにも家具屋さんが作った厚いウォールナット材を使うなど、全体的に無垢材を多用した造作になっています。
それもあって、コストを抑えた内部ドアや、部分的な複合フローリングが、無垢材のほうの雰囲気に引っ張られて違和感なく溶け込んでいるようです。
シアタールームにはご主人の希望で本棚を壁面いっぱいに設えました。
この棚板は無垢を使わず、ラワンランバーコアを使い、必要な強度を保ちながら軽量化とコストダウンを目指しました。
小口はあえてカットしたまま、小口化粧はせず。
それがかえってワイルドなイメージになり、お客様にも気に入って頂きました。
この例がそうであるように、良いVEを行うには
依頼主との間で「これで十分」というラインを探す事、これがポイントとなって来ます。
プロではやる事が常識と思っていたことが、意外にも依頼主はそこまでしなくても問題なし、ということもあります。
それどころか「手を加えない方がかっこ良い」そんな事だってあります。
この洗面カウンターは何に見えますか?
これは実はアイカさんのメラミン化粧板です。
見学会などでも複数の方がここを出入りされましたが、ほぼ全ての方が言わなければ「本物の木」と思っていらっしゃいました。
これはかなり良く出来ていて、私も出来上がって少し驚きました。
水廻りは将来のメンテを考え、耐水性・耐久性とデザインが両立するよう考えました。
台や鏡やニッチは木製です。木と混在して使ってもこれだけ良く似た柄なら違和感ありません。
タオルハンガーやペーパーホルダー、照明の質感はとても大事です。
このような小物、毎日手が触れる部分に素材感を感じる良品を使う事で、空間のグレードや気分もぐっと上がります!
メーカーのお薦め品だけに惑わされず(笑)、目指す空間を考えてお気に入りを選んでいきたいですね。
以上、無垢材・木材・本物の素材と化粧材、それぞれの使い方や両者をバランスよく使って上手く魅せる方法についてご紹介しました。
お客様、曰く、弊社ノエルハウスに来る前に他の住宅展示場に行った際、何か違うと感じるところ、何かよそよそしい感じ、冷たい感じがしたと。
それはひょっとするとこのような素材の使い方の違いかもしれません。
木材には節や反りなど特性があり、お客様にも一定のご理解をいただく必要があります。
また既製品に無いものを作る場合、施工図を書いたり一つ一つ確認をしたりと現場での施工管理の手間も増えます。
それでも、毎回家を作るときそういった部分に手間をかけて作り、最後に後悔した事はありません。
一つ一つ「ほんとにここでしかできないものが出来たなぁ」と自分自身やり切った感があり、満足してお客様にお渡しできています。
これからも、「こんな風にお金が使えてよかった!」
とお客様に感じてもらえるようにベストなバランスで家を作りたいと思います。
デザインに関しても機能に関しても、住んでからのメンテナンスに関しても、最適な答えになるように。